北九州の八幡厚生病院といえば、UCLAのスタディツアー、ハワイのアイポノツアーに、2回もいらしてくださった米良先生が、勤務している病院。
そこで、この夏、まさに、日本なりの、本来の摂食障害の入院治療が行われていることを、実際にこの目で見てきました。
精神科病院の中のストレス緩和病棟の一角に、摂食障害プログラムがあります。
この度、院長先生も、看護のみなさんも、実名で、病院のご紹介をすることを承諾してくださいました!!! ありがとうございます!
拒食でも、過食でも、過食嘔吐でも、下剤乱用でも、過運動でも、低体重でも、標準体重でも、体重過剰であっても、あらゆる摂食障害の治療を、摂食障害が、その方の主な病気であるとするならば、入院3ヶ月で受けることができます。(個別には、病院へお問い合わせいただくか、診察をお受けくださいね。)
摂食障害の方々の不安が一番高まる、食事場面では、看護師さんが、見守りについてくれ、患者さんの直面している不安を、実際に看護師さんも自分のことのように理解してくれています。そして、その不安から、少しでも気をそらせてあげるために、どのような看護の関わりができるのか、考えてくれているのです。
あるいは、患者さんが、その不安に直面することで、回復に近づけるとすれば、その取り組みを一緒にしてくれているのです・・。
また、食後の患者さんにとっては、一番誘惑の多い1時間、嘔吐をしたい、運動をしたい、下剤を飲みたい!という、この1時間、看護師さんが、別室で、摂食障害の患者さんだけを集めて、グループ活動をしてくれていたり、マインドフルネスの練習をしたり、ゲームをしたり、レクリエーションをしてくれています。それにより、患者さんたちの衝動をかなり抑えることができているのです。
体重が増えることへの不安感、食べることへの怖さ、辛さ、苦しさを、実際に取り上げ、グループで話しをする機会を持つことができ、また、家族や人と食べることの練習、外食やおやつを食べる練習、今までの食べることに関する決まりを壊していく練習、など、摂食障害から回復するためには、必須の内容を、実際に取り扱っていらっしゃいました。
そしてそこには、まさに、看護の原点に戻った看護、精神科においては最も重要な、患者ー看護師関係を築くこと、そして、食事、排泄、活動、休息、人との付き合い、気持ちとの付き合い方、考え方のくせ、認知療法、弁証法的認知療法も取り入れながら、心理士さん、栄養士さん、作業療法士さん、看護師さん、医師、ご家族、ご本人が、一つのチームになって、治療を提供している現場を目の当たりにしました。
そして、まだ開発途上だけれど、デイケア、訪問看護につなげる可能性も、たくさんお話しされていました。
そう、もしも、日本で、「摂食障害の治療は外来で」というのが、医師たちのルールだとすれば、せめて精神科の摂食障害専門デイケア、摂食障害専門訪問看護、摂食障害外来、などで、摂食障害から回復するための治療を行なっていきたいです。
そもそもは、摂食障害の患者さんには、人格障害を併発している方々が多い、とのことで、短い入院、ということになったのかもしれませんが、摂食障害の患者さん=人格障害を併発している、ではありません。
人格障害を併発していない摂食障害の患者さんは、たくさんたくさんいらっしゃるのです。そして、医療と繋がれないまま、孤独に苦しんでいることが多いのです。
ぜひ、「摂食障害治療は外来で」というどこからきたのかわからない方針を、変えていかれたら、と思っています。
アメリカでは、摂食障害の治療は、入院、レジデンシャル、デイプログラム、集中外来、外来、が基本です。
保険制度の似ているイギリスでは、外来で、と言われている、と言われるかもしれませんが、それでは、うまくいっていない現実があるのです。
日本で、精神科の病院、病棟を用いて、きちんと摂食障害の患者さんへの治療、看護ができるなら、その可能性を、私はこれから探っていきたいと思います。
そして、ご家族、患者さんの皆さん、もしも入院治療を考えておられるのでしたら、そこは、入院で、体重を指標とした行動制限療法を使う方針かどうか、どうぞご確認ください。
体重を指標とした行動制限療法は、長期的に見て、効果がないばかりか、患者さんにとっての、心の傷を大きくさせてしまう危険性があるのです。
そして回復にとって、とても必要で、なおかつ大切な、人を信じること、人間関係、看護師との人間関係を築くことを、とても困難にさせてしまうのです。
もっと摂食障害の患者さんたちを、人間として扱ってくれるような本来の治療を、日本でもさらに発展させていかれるように、これからも活動していきたいと思います。
貴重な情報をありがとうございます。日本の精神科治療では、摂食障害というだけで敬遠される傾向もあると聞くこともありますが。一度集中的なケアを受ければ、その後の揺り戻しが多少あっても耐えられる力がつきそうにも思います。